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トロイア戦争におけるアキレウスを描いた『イリアス』感想と考察

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小説
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概要

『イリアス』は「トロイの木馬」で有名なトロイア戦争の一幕を描いた長編英雄叙事詩だ。古代ギリシアの吟遊詩人ホメロスによる、紀元前8世紀後半~7世紀前半頃の作品とされる。ギリシア神話を題材とした、西洋文学最古の最高傑作の一つとして知られている。なお、「イリアス」とはトロイアがある地方の名称にあたる。

あらすじ・要約・

ギリシア勢とトロイアは10年に及ぶ大戦争を続けていた。ある時、ギリシア勢最強の英雄アキレウスと、総大将のアガメムノンが戦利品である女性の取り分で争う。これが原因でアキレウスが参加しなくなったギリシア勢は、神々の介入などを経て、トロイア勢にアキレウスの親友パトロクスを討たれる。

仇討ちに出たアキレウスは、親友を殺めたトロイア最強の英雄ヘクトルを一騎打ちで破る。アキレウスはヘクトルの遺体を弄び、悲しみを紛らわせようとする。しかし、最終的には神々の仲介もあって、トロイア王プリアモスの嘆願を受けて返還する。国中が弔うヘクトルの葬儀で物語は締めくくられる。

解説

叙事詩、吟遊詩人とは

叙事詩とは物語を韻文(俳句のように一定のリズムを持つ文)で表したものである。物語の内容は神話や民族の英雄・歴史など。吟遊詩人は暗記した叙事詩を聞き手に披露していた。口頭による伝承から、次第に文字で書き記されるようになり、世界の各地で貴重な歴史資料として残されている。現代と比べて娯楽も少なかった頃、人々は吟遊詩人の叙事詩を楽しみにしていたのだろう。

ホメロスとトロイアは実在したのか

概要で「~とされる」と記したが、本当に実在したかは紀元前のことであり判然としない。ただ、全くの無から生み出したということも考えにくいため、ホメロスやトロイアもモデルが存在したのだろう。

なぜトロイアで戦争をしたのか

実は、トロイア戦争はギリシア神話の主神ゼウスによって駆り立てられたものである。人々に溢れた大地が苦しんでいることを憂いたゼウスは、戦争で人間を減らすことを決意する。

その後、アキレウスの両親であるネレウスとテティスの結婚式で、神々の中で不和と争いの女神エリスだけが招待されないという事件が起きる。エリスは腹いせに「最も美しい女神に」と林檎を投げ入れた。この林檎を巡って、ヘラとアテネ、アフロディーテが争う。いわゆる「不和の林檎」である。

林檎が誰に相応しいか、つまり「最も美しい女神は誰か」を神々はトロイアの王子パリスに選択させる。最も美しい女を与えると言われたパリスはアフロディテを選ぶ。いわゆる「パリスの審判」だ。

「最も美しい女」とはギリシアのメネラウスの妻であったヘレネであり、パリスは女神に導かれて彼女を誘惑及び略奪する。憤慨したギリシア勢は返還を求めて、拒否したトロイアと戦争が勃発する。また、選ばれなかったヘラとアテネはギリシア勢を、アフロディテはトロイアの味方をする。かくして、ゼウスの思惑通りに歴史は刻まれる。

感想

現代と当時の女性観の違い

『イリアス』を読み始めてまず驚愕するのが「女性の扱い」だと思われる。女性は物同様であり、自身が戦争で殺した夫の妻を自分の妻にするといったことが平然と行われる。また、手柄の褒美として三脚釜や酒器といった物と同列で女性が挙げられたりする。現代とは異なる、当時の価値観に触れられるのは本作の魅力の一つだろう。今、このような価値観を持っていたら非難轟々だろうが。

英雄譚の魅力

もう一つの魅力は作中の豪華に賛えられた英雄の活躍だろう。友のために戦う英雄アキレウスと、国のために戦う英雄ヘクトル。戦場で手柄を立てるべく戦う男たち。親友パトロクスを思って悲嘆にくれるアキレウスや、国民に慕われ弔われるヘクトル。私もワクワクして、そして悲しんだ。

考察

本作が生まれた意味

本作は今で言うナショナリズムに近いかもしれない。成立した紀元前800年前後より遡って、紀元前1200年頃に異民族の流入によりミュケナイ文明(トロイア戦争の頃の文明とされる)が崩壊した。そして400年の時を経て、都市国家が成立しつつあった。しかし、文明の崩壊や異分子の混入で民族意識を遺失していたため、意識の統一を図る運動が興ったのだ。英雄たちが結集してトロイアを滅ぼすという筋書きは、民族統合の象徴と言える。

英雄譚は燦然と輝くミュケナイ時代と当時の人々をつなげる架け橋だった。『イリアス』ではギリシアの様々な地域の英雄が登場するが、かつての栄光を想起させ民衆を鼓舞したに違いない。

本作のテーマ

トロイア的な社会の在り方こそ、今後のあるべき姿だと示そうとした。ギリシア勢はパトロクスを競技大会で弔ったように各英雄の競争社会だ。一方、トロイアはヘクトルを国中が一丸となって埋葬する融和社会と言える。

たしかに、トロイアはギリシア勢に軍事的に敗北して滅亡する。しかし、プリアモスにアキレウスがヘクトルを返還する場面や、物語のラストのヘクトルの埋葬は強烈に印象に残る。一方、ギリシア勢は戦争に勝利したものの、その後は過酷な運命が待ち受けている。作中では描かれないが、アキレウスは戦死して、アガメムノンや大英雄オデュッセウスにも困難が待ち受けている。

神々の世界では、物語序盤~中盤は各神々が己のために争う。一方、終盤はゼウスによってヘクトルの返還に向けて一つにまとまる。当時の『イリアス』は、都市国家としてギリシアの統合を応援する作品であった。

まとめ

敗れはしたが、ヘクトルの献身には感銘を受けた。現代で血なまぐさい戦は出来ないので、仕事で考えようと思う。誰かのための勤労だと考えると、明日も働く力が湧いてこないだろうか。

参考 ホメロスの環は閉じられない 小川正廣 名古屋大学文学部

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